ストレージサービスの種類
InfiniCloud のHigh Response Private Cloud(HRPC)には、次の種類のストレージサービスがあります。
- Interconnected Storage (ICS)
- レイテンシーの影響を受けやすいワークロードのパフォーマンス向上を促しつつ、高い信頼性をもつ永続化ストレージ。
- Enterprise Storage (ES)
- 業界最速クラスのNVMe SSDを搭載し、リソースの範囲でBlock Storage (ESB)、File Storage(ESF)を自由に切り出し可能なEnterprise Storage。
- Backup Storage (BS)
- データアーカイブに向き、リソースの範囲でBlock Storage(BSB)、File Storage(BSF)を自由に切り出し可能な、容量特化型ストレージ
全てのストレージは永続化ストレージ(Persistent Storage)であり、HRPCインスタンス(以下HRI。オンプレミス仮想化環境でいう仮想マシンのこと)がシャットダウンされてもデータは保持されます。
このドキュメントでは、ICS、ESB、ESF、BSB、BSFそれぞれの使い分けについて記述します。
下記にHRPCとストレージの全景を簡略、単純化した図を記載します。
この図において、
- HRPC: High Response Private CloudのIaaS基盤こと。特に注釈が無い限り、HRPCの基盤そのものを示す。
- HRI: High Response Private CloudのInstanceのこと。
- ES: Enterprise Storageのこと。Dedicated Guaranteedを問わない。
- ESB: Enterprise Storageから切り出すBlock Storageのこと
- ESF: Enterprise Storageから切り出すFile System Storageのこと
- BS: Backup Storageのこと
- BSB: Backup Storageから切り出すBlock Storageのこと
- BSF: Backup Storageから切り出すFile System Storageのこと。
HRPC(IaaS基盤)用Volumeにストレージとは?
HRIのOSブート用ストレージ(VD)は、HRPC上のStorage Volumeで接続可能なストレージサービスを組み合わせる必要があります(※HRPC Guaranteed TypeはICSが自動選択されています)。
HRPC用のStorage Volumeとして接続可能なサービスは十分な速度が必要になるため、下記の物を選択可能です。
- ICS
- もっとも高速に動作し、IOレイテンシが短いため、シビアなワークロードに向いています。
- HRPC基盤に障害が発生すると、搭載されているHRIへのアクセスができなくなってしまうため、HRIの層でのサービス冗長をすることが推奨されます。
- ESB
- 高速に動作するブロックストレージで、並列動作に強くトータルのIOPSは高いですが、ICSに比べるとIOレイテンシが劣ります。シングル・キューのIOアクセスはICSの方が高速です。
- HA機能(HRPC基盤に障害が発生したとき、HRIを別のHRPC基盤からリブートさせる機能)が利用可能です。これには余剰分のHRPC基盤の契約が必要になります。
- ES基盤に障害が発生すると、ESBに保存されたHRIすべてがアクセスできなくなってしまいます。
どの手法においてもレプリケーション機能などを用い、バックアップなどを備える必要があります。
HRPCのレプリケーションガイド(RPOとRTO)
如何なるシステムであってもバックアップは重要です。ストレージは永続化(Persistent)とはいえ永久(Permanent)ではなく、それぞれに特性があり冗長度が異なります(参考:テクニカルノート/永続化されたストレージ (Persistent Storage)とは)。
バックアップには様々な手法がありますが、レプリケーション機能を利用するのが、もっとも安易な方法です。レプリケーション機能はIRF(Inter Regional Fabric)を組み合わせることだけでリージョンを跨いで行うことができるので、BCP(ビジネス継続計画)におけるDR(ディザスタリカバリ)にも、安易で有用な手段となります。
ES、BSはそれぞれ、Snapshot型Replicationを行う機能があり、ターゲット側(データを受け取る側)で設定を行います。ES、BSでESB、ESFなどを切り出し、HRI内から接続していた場合、ES、BSの機能を利用してレプリケーションを行うことができます。
HRIそのものを、レプリケーションしたい場合、HRSのContinuous Replication機能を用いることができます。
これらのReplication機能はどれもSnapshot型Replicationであり、あらかじめユーザがRPO(想定リカバリポイント)を設定し、もしもの時にデータの巻き戻り(バックアップからのリカバリは必ずRPOの分データが巻戻ります)が、どのぐらい許容されるかを考え設定することが必要です。
(参考:テクニカルノート/Snapshot Replicationとは)
HRPCのHRIをレプリケーションするためには、次の2つのストレージサービスが利用可能です。
- ESB(ICS→ESB、ESB→ESB)
- RPOを比較的、短めに設定ができます。
- RTO(復旧想定時間)はほぼなく、ESBからユーザが起動させることがメリットです。
- BSB(ICS→BSB、ESB→BSB)
- RPOを比較的、長めに設定する必要があります。
- ICSやESBに対して、コピーバック作業が必要になります。
- RTOはコピーに想定される時間分必要となります。
※HRPC Guaranteed Typeの場合、HRIは共有のBSBにReplicationが設定可能です。復旧は自動ですが、時間を用します。
RPOの時間について
レプリケーションは、HRIがデータを更新する量に比例して時間がかかります。良く更新されるシステムであれば時間がかかりますし、あまり更新されないシステムであれば、時間がかかりません。
またレプリケーション元とレプリケーション先(ターゲット)のリージョンが異なる場合は、利用するIRFの帯域にも影響されます。
BSはアーカイブ、バックアップ用にデザインされたストレージであるため、速度については最適化されていません。そのためBSへのレプリケーションは時間がかかるだけでなく、復元時もコピーバックが必要になるため、多くの時間がかかります。
リージョン影響 | 同リージョン | レプリケーション時間は短めです |
---|---|---|
異なるリージョン | IRFの速度、物理的な距離に応じてレプリケーション時間がかかります。 | |
ストレージ影響 | ES | レプリケーション時間が短め |
BS | レプリケーション時間が長め |
これらは、システムの許容度に応じて計画する必要があります。